”あのお方”が封印されている場合、”あのお方”は何か重大な禁忌を犯したが、処刑することができなかったということ？
処刑できなかった。つまり、力が強すぎて、倒すことが不可能だったということ。
稀にある話で、あり得なくはない。
この場合は、”あのお方”は死神であり、何らかの記録も残っているとみて間違いないだろう。
次に、”あのお方”は死亡しているという場合が考えられる。
もしそうだった場合、”あのお方”は、ただの魂魄、死神、滅却師、人間、虚……このうちのどれであっても可笑しくはない。
死神以外だったら、ほとんど手がかりはないわけで…。
拓「あ～…ややこしい。」
俺は頭を抱える。
一つだけ確かなことがある。
”あのお方”は相当強いだろうってこと。
俺たちの力が”あのお方”に及ばないことも視野に入れておかなければいけない。
とにかく今は、”あのお方”に関する情報が少なすぎる。
何か、何でも良いから、”あのお方”についての情報が欲しい。
そうでなければ、対策を考えようもない。
俺は、ゆっくりと立ち上がり、我妻家の書庫へと向かった。
我妻の歴史は長い。
もしかすると、”あのお方”に関する記録もあるかもしれない。
書庫についた俺は、手当たり次第に記事を読みあさり始めた。
少しでも手がかりがあれば──
少しでも亜莉亜を助けられたら──
そんなことを願いながら。
今夜はまだ一睡もしてなかったけど、俺の中に眠気なんて、ひとかけらも無かった。