空座町内をぶらついていた亜莉亜は、自らの手に持つ伝令神機に目をやった。
『そろそろか。』
虚出現予定時刻３０分前。
隊員たちに集まるように言っておいた時間だ。
霊圧を探って、隊員たちの居場所を調べる。
すると、亜莉亜の脅しがきいているのか、隊員全員が所定の持ち位置についていた。
隊員たちの方にゆっくりと足をむける亜莉亜だが、未だにその心は揺れていた。
とりあえず各々に任せ、様子を見ようとは決めているが、その後どうするかは考えられていなかった。
拓「亜莉亜、皆そろったよ。」
いつのまにか隣にいた拓斗が、亜莉亜に報告をした。
表情を変えずに亜莉亜は頷くと、自分の持ち位置につき、隊員たちの場所を確認し始めた。
今回の配置は、いつもとは全く違う。
平隊員を前線に出しているのだ。
しかも、吉沢湖娘派を前に、元からいた隊員たちをを後ろ側に配置してある。
そして、平隊員の後ろに、亜莉亜、席官と配置してある。
だが、席官の中に龍の姿は無い。
龍には、万が一のことを考え、叉夜の元を離れないように言ってあるためだ。
そうこうしているうちに、ついに虚の出現予定時刻となった。
ゴォォォ…
膨大な霊圧と共に、数体もの大虚が姿を現した。
『訓練開始』
亜莉亜の合図と共に、隊員たちは数人ずつの固まりとなって、大虚へ向かっていく。
その中には、そらや、華恋、江恋の姿もあるが、その三人には、積極的に戦いに参加しないよう、亜莉亜は指示を出していた。
というのも、彼らは平隊員の中でもずば抜けて強いのだ。
大虚に彼らの相手はできない。
再び亜莉亜の視線は、一般の平隊員たちへと戻る。
隊員たちはバラバラに大虚に攻撃を仕掛けている。
『酷いものだな。』
いくら無力な平隊員だからといえ、やはり零番隊である。
数人で力を合わせれば、大虚を倒すことも難しくないと亜莉亜は思っていた。