石田がそう呟いたのと同時に、俺たちの見えるところに、大きな穿界門が現れた。
開いた穿界門の奥には、数十人の死神が見えた。
一「なんだ、亜莉亜じゃねーか。」
一護は、死神たちの先頭にいる女性を見て言った。
雨「ということは、零番隊か。だが、零番隊が一体何の用で」

『予定時間までは自由行動でいい。虚出現時刻30分前には所定の配置につくように。』
亜莉亜の指示を聞いてか聞かずか、隊員たちはだらだらと動き出す。
『お前らもだ。今のうちにゆっくりしておけ。』
亜莉亜は、自分の背後に立ち尽くす席官たちを、横目で見る。
だが彼らは複雑そうな表情をしたまま、動こうとしない。
先程のことが気にかかっているのだろう。
隊首室を出た亜莉亜は、その後集合時間まで帰ってくることはなく、その上、あれから誰とも話をしていない。
拓「──ねぇ、亜莉亜？」
拓斗が柔らかい声で亜莉亜に話しかける。
『……』
亜莉亜は何も答えず顔も向けないが、拓斗は気にせず亜莉亜の近くへ歩み寄った。
そして、亜莉亜と肩を並べ、静かに口を開いた。
拓「確かに、人を信じることは難しいね。だけど、それでもまだ決めきれないんだよね。」
拓斗の言葉に、亜莉亜は目を伏せる。
拓「でも、亜莉亜がどう考えていようと、俺たちの気持ちは変わらない。──亜莉亜、これだけは覚えていて。」

「君は、一人じゃない。」

亜莉亜は目を上げ、拓斗の方を見た。
拓「嫌だって言っても、亜莉亜を一人にはさせない。何を選んでも、付いていくよ。だから、自分を信じて進んで。苦しいときには、俺たちを頼って。ちゃんと受け止めるから。ね？」
拓斗の優しい笑顔に、亜莉亜の瞳が揺らぐ。
『…すまない。』
シュッ…
亜莉亜は、謝罪の言葉を残し、瞬歩で姿を消してしまった。
拓「……」
杏「副隊長、隊長は──」
心配そうに杏樹は拓斗を見る。
拓斗は振り向くと、ふっと微笑んだ。
拓「大丈夫。亜莉亜はきっと、答えを見つけてくるよ。」