SS
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
※夢主はGF$の専属メイドです。
※$目線の話です。
アンダーバンクに帰ると、カオリが上機嫌に歌っていた。ボクはその歌の名前を口にした。すると彼女は驚いたような顔をしてみせた。
「ナガレ様、知っていたんですね」
「有名な曲じゃないか」
「このような流行りの曲、お聞きにならないと思っていました」
そんなことないさ、とボクは言った。
「ここに花瓶……なんて、あるわけないですよね」
よく見るとカオリは白い花弁を持つ小さな花を両手で大事そうに持っていた。
「造花か?」
「はい。綺麗でしょう? ナガレ様がいない間に買ってきたんです。お部屋に飾ってもよろしいですか?」
なるほど、とボクは思う。造花は枯れないし、水も必要としないので手入れが要らない。彼女らしい選択だ。
「ああ、許可しよう」
「ありがとうございます」
「確か、スズランの花言葉は『純粋』だったか」
「そうなのですか?」
「ボクの記憶が正しければな」
へぇ、と感嘆を漏らしつつ、彼女は花──スズランをまじまじと見つめた。
「まるでキミのようだ」
「えっ!?」
素っ頓狂な声を上げて、ボクの方に向き直るカオリ。顔は茹でダコのように真っ赤になっていた。その様子が面白くて、おかしくて、ついフッと笑ってしまう。
「わ、笑いましたねナガレ様」
ムッとするのも可愛らしい。
「いや、つい、可愛い、と思ってしまってね」
「かっ、かわ……!」
思ったことをそのまま伝えると、恥ずかしさのあまりか、固まったまま動かなくなった。スズランが彼女の手から離れ、床に落ちる。ボクはそれを拾い上げて渡した。
「す……スズランは綺麗ですよね……」
照れているのか視線は宙をさまよい、視線がかち合うことはない。無理に会話を続けようとしなくてもいいのに。それがいじらしいと思う反面、心配でもあるのだ。
「ええと、コホン。ナガレ様ナガレ様、造花にも花言葉があるって知ってました?」
咳払いをして話題を変えたのは彼女なりの意地だろう。
「知ってるさ。『いつまでも変わらない愛』か?」
「流石です。そちらを答えてくれるなんて優しいのですね」
「もうひとつが本心だとでも?」
「とんでもありません。そんなことはナガレ様が一番わかっておられるのでしょう?」
造花のもうひとつの花言葉が『偽りの愛』であることはあえて伏せておく。
「まあな」
「それにしても、花言葉にお詳しいんですね。ナガレ様って意外とロマンチストだったり……?」
「以前読んだ小説に書いてあっただけだ」
「そうなのですね」
カオリは再び花へ視線を落とした。
ボクたちはしばらく黙ったまま、花を見つめ続けた。
「ナガレ様」
沈黙を打ち破ったのはカオリだった。
「私のこと、好き?」
唐突な質問だ。しかし、それは不安になりやすい彼女がいつも聞いてくることだ。
「好きに決まっているだろう」
ボクの言葉を聞いて、カオリは控えめに微笑んだ。
「造花を売ってるお店の人がおっしゃっていました。今の時期は、お盆に向けて造花を買う人が多いんだ、と」
私がいなくなってしまったら、ナガレ様は私のお墓にお花を添えてくれますよね。と不穏なことを言い始める。これもいつものことだ。彼女はいつも自分の死について冗談のように語る。その後、決まって悲しそうに笑うのだ。その表情を見ると、胸の奥がきゅっと締め付けられる。
「ボクがいるから大丈夫だ。キミがいなくなるなんてことはボクが許さない」
「嘘つき」
「嘘じゃない。これは命令だ」
「……ありがとうございます」
彼女は目を閉じて小さく呟いた。安堵したように肩から力が抜けているのが分かった。そしてすぐに瞼を開けてこう続ける。
「ですが、もしも本当に私がいなくなってしまったとしたら、その時はちゃんとお花を買ってきてくださいね。造花じゃなく、本物の花を」
「わかった。約束する」
彼女が望むならそうしてあげたいが、できれば実際には起こらないでほしい。この温もりを失うことになる、そんな未来など来なければいい。
「これが本物でしたら、今すぐ食べて死んでしまいたい気分です」
「縁起でもないことを言うな」
「だって、幸せすぎますから」
スズランには毒が含まれている。少量でも死に至るような猛毒だ。そんなものが体内に入ったらただじゃ済まない。確かに幸せなまま逝けるかもしれないけれど、そんな願いを聞き入れるほどボクはお人好しじゃない。
ここまで考えて、ふと脳裏によぎった可能性を聞いてみることにした。
「そんなスズランのことに詳しいのに、花言葉を知らないなんて不自然じゃないか?」
「バレちゃいました?」
彼女は悪戯っぽく笑ってみせた。やはりわざとだったらしい。
「でも、スズランの『純粋』な愛はナガレ様にしか向けてませんから」
カオリはそう言って再び微笑んだ。ボクもつられて笑う。この幸せをいつまでも感じていたいと思った。
「そうだ! ナガレ様、ひとつお願いがあります」
「何だい?」
「花瓶、一緒に買いに行きませんか?」
こちらを飾るための、と彼女は付け足した。
「いい考えだ」
ボクは即答する。断る理由などない。
「良かった。断られたらどうしようかと思いました」
「断らないさ、そんなこと」
ボクの言葉に、カオリは満足げな笑みを浮かべる。
スズランの花言葉はいくつかあって、その中にはこんなものがある。
『再び幸せが訪れる』
カオリと一緒に、この先も幸せであり続けたい。
そんな願いを胸に、ボクは彼女の手をぎゅっと握りしめた。
※$目線の話です。
アンダーバンクに帰ると、カオリが上機嫌に歌っていた。ボクはその歌の名前を口にした。すると彼女は驚いたような顔をしてみせた。
「ナガレ様、知っていたんですね」
「有名な曲じゃないか」
「このような流行りの曲、お聞きにならないと思っていました」
そんなことないさ、とボクは言った。
「ここに花瓶……なんて、あるわけないですよね」
よく見るとカオリは白い花弁を持つ小さな花を両手で大事そうに持っていた。
「造花か?」
「はい。綺麗でしょう? ナガレ様がいない間に買ってきたんです。お部屋に飾ってもよろしいですか?」
なるほど、とボクは思う。造花は枯れないし、水も必要としないので手入れが要らない。彼女らしい選択だ。
「ああ、許可しよう」
「ありがとうございます」
「確か、スズランの花言葉は『純粋』だったか」
「そうなのですか?」
「ボクの記憶が正しければな」
へぇ、と感嘆を漏らしつつ、彼女は花──スズランをまじまじと見つめた。
「まるでキミのようだ」
「えっ!?」
素っ頓狂な声を上げて、ボクの方に向き直るカオリ。顔は茹でダコのように真っ赤になっていた。その様子が面白くて、おかしくて、ついフッと笑ってしまう。
「わ、笑いましたねナガレ様」
ムッとするのも可愛らしい。
「いや、つい、可愛い、と思ってしまってね」
「かっ、かわ……!」
思ったことをそのまま伝えると、恥ずかしさのあまりか、固まったまま動かなくなった。スズランが彼女の手から離れ、床に落ちる。ボクはそれを拾い上げて渡した。
「す……スズランは綺麗ですよね……」
照れているのか視線は宙をさまよい、視線がかち合うことはない。無理に会話を続けようとしなくてもいいのに。それがいじらしいと思う反面、心配でもあるのだ。
「ええと、コホン。ナガレ様ナガレ様、造花にも花言葉があるって知ってました?」
咳払いをして話題を変えたのは彼女なりの意地だろう。
「知ってるさ。『いつまでも変わらない愛』か?」
「流石です。そちらを答えてくれるなんて優しいのですね」
「もうひとつが本心だとでも?」
「とんでもありません。そんなことはナガレ様が一番わかっておられるのでしょう?」
造花のもうひとつの花言葉が『偽りの愛』であることはあえて伏せておく。
「まあな」
「それにしても、花言葉にお詳しいんですね。ナガレ様って意外とロマンチストだったり……?」
「以前読んだ小説に書いてあっただけだ」
「そうなのですね」
カオリは再び花へ視線を落とした。
ボクたちはしばらく黙ったまま、花を見つめ続けた。
「ナガレ様」
沈黙を打ち破ったのはカオリだった。
「私のこと、好き?」
唐突な質問だ。しかし、それは不安になりやすい彼女がいつも聞いてくることだ。
「好きに決まっているだろう」
ボクの言葉を聞いて、カオリは控えめに微笑んだ。
「造花を売ってるお店の人がおっしゃっていました。今の時期は、お盆に向けて造花を買う人が多いんだ、と」
私がいなくなってしまったら、ナガレ様は私のお墓にお花を添えてくれますよね。と不穏なことを言い始める。これもいつものことだ。彼女はいつも自分の死について冗談のように語る。その後、決まって悲しそうに笑うのだ。その表情を見ると、胸の奥がきゅっと締め付けられる。
「ボクがいるから大丈夫だ。キミがいなくなるなんてことはボクが許さない」
「嘘つき」
「嘘じゃない。これは命令だ」
「……ありがとうございます」
彼女は目を閉じて小さく呟いた。安堵したように肩から力が抜けているのが分かった。そしてすぐに瞼を開けてこう続ける。
「ですが、もしも本当に私がいなくなってしまったとしたら、その時はちゃんとお花を買ってきてくださいね。造花じゃなく、本物の花を」
「わかった。約束する」
彼女が望むならそうしてあげたいが、できれば実際には起こらないでほしい。この温もりを失うことになる、そんな未来など来なければいい。
「これが本物でしたら、今すぐ食べて死んでしまいたい気分です」
「縁起でもないことを言うな」
「だって、幸せすぎますから」
スズランには毒が含まれている。少量でも死に至るような猛毒だ。そんなものが体内に入ったらただじゃ済まない。確かに幸せなまま逝けるかもしれないけれど、そんな願いを聞き入れるほどボクはお人好しじゃない。
ここまで考えて、ふと脳裏によぎった可能性を聞いてみることにした。
「そんなスズランのことに詳しいのに、花言葉を知らないなんて不自然じゃないか?」
「バレちゃいました?」
彼女は悪戯っぽく笑ってみせた。やはりわざとだったらしい。
「でも、スズランの『純粋』な愛はナガレ様にしか向けてませんから」
カオリはそう言って再び微笑んだ。ボクもつられて笑う。この幸せをいつまでも感じていたいと思った。
「そうだ! ナガレ様、ひとつお願いがあります」
「何だい?」
「花瓶、一緒に買いに行きませんか?」
こちらを飾るための、と彼女は付け足した。
「いい考えだ」
ボクは即答する。断る理由などない。
「良かった。断られたらどうしようかと思いました」
「断らないさ、そんなこと」
ボクの言葉に、カオリは満足げな笑みを浮かべる。
スズランの花言葉はいくつかあって、その中にはこんなものがある。
『再び幸せが訪れる』
カオリと一緒に、この先も幸せであり続けたい。
そんな願いを胸に、ボクは彼女の手をぎゅっと握りしめた。
2/2ページ