燃ゆる想い
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「土方さ───」
「こいつを早く連れて出ろ」
顎をしゃくられて、沖田はのぞみを見た。
改めて見ると、彼女は手拭いを頬に当てている。
「土方さん、一体何───」
「いいから早く連れて行け!」
怒鳴られて、沖田は唇を尖らせながらのぞみに近付いた。
「ほら、行くよ」
手を差し出すと、彼女に付き添っていた男が顔を上げた。
鬢がもじゃもじゃの、パッとしない風体の男だ。
先ほど厠ですれ違った男のように、色の褪せた着物を着ている。
一目で浪人と分かる男だ。
「ほれ、お連れさんがおまんを迎えに来ちょるがじゃ。
もう安心ぜよ」
小さい子に言い聞かせるような優しい言い方で言って、ぽんぽんとのぞみの肩を叩く。
沖田は少しムッとして、「むん!」ともう一度手を差し出した。
「さ、立てるがじゃろ?」
男は中腰になると、彼女の脇の下に手を差し込んで立ち上がらせた。
「ほいたら、よろしゅうのう」
そう言って沖田にのぞみを預けると、男はのっそりと立ち上がった。
決して丈は低くない沖田が仰ぎ見なければならないほどの長身だ。
ゆっくりと歩き出した男の背中に沖田はひとりごちた。
「なんだ、あいつ」
土方が何か言葉をかけたが、男はちょこんと頭を下げて鴨居をくぐると、そのまま部屋を出ていった。