燃ゆる想い
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「おお、すまんすまん、ちくと懐かしい奴がうろちょろしちょったがじゃき、声を掛けちょったんじゃ」
才谷さんは頭をガシガシ掻きながら言って、その掻いた手であたしの肩を掴んだ。
「のぞみじゃ」
その男に向かってあたしを紹介する。
「なんだ、この男か女かわからない奴は」
「おなごじゃあ、可愛いらしい顔しちょるじゃろうが」
その蛇みたいな男が、品定めするみたいにあたしを見る。
才谷さんと違って、平助くんほどしか背丈のないこの男は、一風変わった髪型をしていた。
「え、ザンギリ頭?」
「何だって?!」
思いっきりメンチを切ってくる。
(けど、ザンギリ頭って文明開化やんなぁ?)
(文明開化って、明治時代と違たっけ?)
(え、ひょっとして、もう明治時代って近いん?)
「で、どの部屋か分からんようになった、ちゅうことらしいんじゃ」
才谷さんは勝手にあたしの今の状況を説明している。
「どうじゃ、仲居が来るまで、ワシらの部屋に入れてやっては?」
疑り深い目であたしを睨みつけながら、男は「入れ」とばかりに顎をしゃくった。
ほんま、先に見つけてくれたんが、才谷さんで良かった。
部屋の中には、芸妓が一人。
「ほれ、遠慮は無用じゃ」
才谷さんに背中を押されて、あたしは中に入った。
あたしを追い越してスタスタ歩いて行ったザンギリ頭がどすんとお膳の前に胡座をかいた。
袴は着けずに、綿の着物を着流している。
(町人かな…………?)
「タカスギはん、どなたどすぅ?」
「僕は知らない。サカモト君が拾った女だ」
「サカモト先生、どなたどすぅ?」
「こら、しっ!」
才谷さんは指を立てて言ってから、「あはは」と笑った。