燃ゆる想い
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団子のオジサンは、片眉を高々と上げてあたしを見下ろしている。
「…………えーと、すいません、なんていう名字でしたかね?」
初めて聞く名字だった。
「才谷じゃあ」
とても残念そうに吐き出した才谷さんの顔が可笑しくて、あたしは思わず笑ってしまった。
「あ、そうそう!サイタニ、サイタニ!」
あたしはぺこりと頭を下げる。
「あの時は大変ご馳走になり、ありがとうございました」
「なになに、構わんがじゃ」
鷹揚に言って、才谷さんはあたしを不思議そうに見下ろした。
「────で、今日はこんなとこで何をしちょるがじゃ。
ワシが見つけたから良かったものの、こン中の男に先に見つかっちょったら、エラいことになっちょったぜよ」
相変わらずの方言で言って、才谷さんは顎をしゃくって、あたしが聞き耳を立てていた襖を示した。
「別に盗み聞きしてたわけやないんです。
トイレから戻って来たら、どこの部屋やったんか分からんようになってしもて」
「ほう、トイレから!?」
「はい」
「何じゃ、それは」
あたしは、ガクーッ、とずっこけてから「厠です」と言い直した。
「部屋が分からんちぅなら、大声で呼んでみたらええがじゃろ」
「えぇー、嫌ですそんなんカッコ悪い」
「格好つけちょる場合か」
そのうち仲居さんが通るだろうし、その時に訊いてみよう。
そう思っていると、襖がスっと開いた。
「何を大声でゴチャゴチャやっているんだ」
その言葉遣いに似合わず、目付きの鋭いチンピラ風の男が顔を出した。