燃ゆる想い
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やはり、【女】だった。
怪我をしたから、というのは口実に過ぎなかったのだ。
【破談にして欲しい】
その理由は、大坂で斬り合いがあり、酷い怪我をしたせいで不具となってしまったから。
身請けをする資格を失ってしまったからというものだった。
それでもかまわない───明里は食い下がった。
身体が不自由なら尚のこと、側にいてお世話をして差し上げたい。
少しでもその苦痛を和らげて差し上げたいと、明里は申し入れ続けた。
だが、山南は頑なだった。
【もっと相応しい相手に】との態度を崩さない。
悲しみのどん底にいた明里に、一縷の望みを与えてくれたのは土方歳三だった。
剣士としては再起を望めない程の酷い怪我を負ったから、今は気が滅入っている。
冷静な判断力にも欠けている、と。
大坂での療養を終えて、いよいよ京にも戻り、気力も戻りつつあるから待ってやって欲しい───と。
なのに、ひと目会いたくて壬生村まで行ってみれば───【おなご】だ。
いつからの仲なのだろう?
どれほどの仲なのだろう?
何か山南の態度に変わった様子はあっただろうか?
そういえば、───大坂へ下る直前に会ったとき。
久しぶりの逢瀬を楽しみにしていたのに、山南はどこか【心ここにあらず】だった。
(大坂でのお勤め、緊張しといやすのやなぁ)
呑気にそんなことを考えていた自分が滑稽だ。
山南は、女のことを考えていたに違いない。
壬生寺の山門からでは距離があって顔のつくりまでは分からなかった。
でも、今の女に違いない。
山南の香りが移っていた。
親密な仲に違いない。
キリッとした顔立ちの目元の涼しい女だった。
男装の理由は分からないが、きっと武家の娘だろう。
物怖じしない態度に、それが表れている。
芸妓の自分なんかより、ずっと魅力的に違いない。
「おねぇはん?」
再び禿に呼ばれて、明里は我に返った。
「泣いたはんのん?」
「ううん、」
「誰かにいけずされはったんどすか?」
「ううん、ちゃうの」
さんなん先生に────ううん、あの女に。
(いけずされたんや)