燃ゆる想い
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「おねぇはん、どないしはったん?」
禿に問われて、明里は我に返った。
「なんもない。さ、行きまひょ」
裾をさばいて、背を向ける。
(さっきのお人…………)
(さんなん先生の匂いがした)
だから、新選組の若い隊士かと思った。
山南がここに来ているのなら、ひと目会いたい。
どの間に通されているのか聞きたい。
衝動が抑えられずに声を掛けた。
【ちゃいます】
そう答えたのが女の声だったことにハッとする。
(おなご?)
正月は店が休みなのをいい事に、置屋を抜け出した明里は、真っ直ぐに壬生村の屯所へと向かった。
だか、男ばかりの屯営に足を踏み入れるのは、思った以上に勇気のいることだと知った。
肩を落として島原へと帰ろうとしたとき、一緒に来てくれていた三味線のお師匠さんが「あ、」と声をあげたのだ。
「明里はん、あれ」
お師匠は、壬生寺の山門の中を指差している。
「あれ、さんなん先生やおへんか?」
押しのけるようにして駆け出してみて、明里は愕然とした。
確かに、お堂の階段に腰掛けているのは山南敬助だ。
だが、その腕の中に───
(おなご!!)
はんなりとした晴れ着をまとった女子が収まっている。
山南は、明るい空の下にいるにも関わらず、今にもその女の口を吸わんばかりに顔を寄せている。
(そんな、───)
山門にすがり付くようにして、明里はどうにか足を踏ん張った。