燃ゆる想い
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ちょうど目の前には総司くんがいる。
あたしの視線に気付いて、「アッカンベー」と舌を出してきた。アホか、こいつ。
「沖田せんせえ、何どすそれぇ」
土方さんからさっと離れて、今度は総司くんにお銚子を突き出していた芸妓が袖で口を隠してクスクス笑った。
(アホやろ、こいつ絶対)
ムッとしながら、あたしは自分の膳に用意された杯をひっくり返して、お銚子を持ち上げた。
「のぞみ君、」
呼ばれて山南さんの方を見ると、お銚子を掲げている。
「ここの料理は絶品だから、君も楽しみなさい」
「ありがとうございます」
お酌を受けながら、あたしは視線を落とした。
こんなに綺麗な女性たちの前だと、どうにも居心地が悪い。
島原の遊女たちは、いわゆるアイドルであり、ファッションリーダー的な存在。
髪型や簪、着物、どれも最先端で、京の女の子たちはその真似をしたがるという。
普段はそんなこと思わないのに、男の着物を着ていることや、化粧っ気のない顔を見られるのがとても恥ずかしい。
山南さんの隣の人が明里さんなんだろうか?
白いふっくらした頬、黒目勝ちな大きな目がお人形みたいで、この世のものとは思えない可愛さ。
つまみ上げたみたいに小さな形の良い鼻の下にちょこんとおさまっているおちょぼ口が紅に染められて女っぽく艶めいている。
(みんな、奥さんにしたがるはずやな)
こんなに可愛らしくて教養もあり、芸事も達者な奥さんを持つことがステータスであることがよくわかる。
家に帰るのも楽しみだろう。
───胸が痛い
それを気付かれたくなくて、杯をあおった。
高級なお酒なんだろう。
それはあたしの喉を焼くことなく、つるつると滑って胃の中に流れ込んだ。