ドキドキのお留守番
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山南さんは、これを読んでどう思うだろう。
(【復縁する】て言わはったら、どうしよう)
そう思って、自己嫌悪に陥った。
あたしは、復縁しないで欲しいと願っている。
願うべきは山南さんの幸せなのに、ここにいて欲しいと思ってる。
ずっとあたしだけの山南さんだったらいいのに───と。
「のぞみ君、これを誰から預かった?」
いつになく厳しい口調に、今の心情を咎められたような気がして、あたしはぎくしゃくと顔を山南さんに向けた。
「この手紙を君に渡したのは誰だい」
「あ、えと、五平です………けど、」
「五平が?」
「はい。ほら、こないだ!」
壬生寺の山門から、中を覗いていた人が明里さんだった───そう伝えれば、山南さんはどうするだろう?
「───この間?」
「えと、この間、お寺を覗いてた人とは別の人やったらしいです………」
言ってから失敗だったと気付いた。
これでは、【手紙を渡したのは覗き見ていた人だった】と言っているようなものだ。
「───そう、」
嘘を見抜いたんだろう。
眉間にシワを寄せて、山南さんは手紙をたたんだ。
嫌な女だ───そう思われたかもしれない。
だが、山南さんはまた穏やかな声色で言った。
「お、そろそろ餅が焼けたようだ。
君が食べないというなら、私が頂くとするかな」
恐る恐る顔を上げると、あたしの目を覗き込んで、山南さんはにっこりと笑った。
「君が心配するような手紙ではなかったよ。
さあ、一口どうだい?」
一口大に切ったお餅をあたしの口まで運んでくれる。
そりゃあ、あたしには明里さんとのことをとやかく言う権利は無いだろう。
【お側にいはる間に、ぎょうさんお話ししとかんと後悔しますえ】
───そうだ。
山南さんがここにいる間に、山南さんがここを出ていってしまうまでに、たくさん思い出を作っておかなくては。
あんこの乗ったお餅を口に入れると、山南さんはまたにっこりと笑った。
「おいひい」
「そりゃあ良かった」
「一口食べたら、お腹空いてきました」
笑った拍子に涙がこぼれそうになって、慌ててゴシゴシと手でこすった。