ドキドキのお留守番
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やっぱり光縁寺までの距離は歩くのが辛いのかと、あたしは悲しい気持ちになった。
馬詰さんは、一礼して部屋を出ていく。
前川邸まで行って、残った年少の隊士に駕籠を呼びに走らせるためだ。
馬詰さんが部屋を出ていくと、山南さんは秘密をもらすみたいに声をひそめた。
「知っているかい?」
「なんです?」
あたしもヒソヒソと答える。
「馬詰さんは、毎晩必ず厠へ行くんだ」
「はい」
「一旦部屋を出ると、しばらくの間戻らない」
山南さんも気付いていたんだと、あたしは苦笑する。
「その合間に、私の部屋に誰かが忍び込んだらどうするつもりなんだろうね」
───それは、どういう意味だろう。
にわかに鼓動が速くなる。
「あたしが、代わりに見張りに来ても、あんまり役に立ちそうにないですしね」
ここに、来てもいいですか───そういう意を含ませて言ってみた。
山南さんは、にこりと笑う。
「確かに君では馬詰さんの代わりにはなれないな」
「………ですよね」
予想外につれない返答に悲しくなって、「へへ」と笑って、あたしはお味噌汁をすすった。
「だって、君が来たら、蒲団に引き入れてしまいたくなる」
お椀に顔が隠れていて良かった。
きっと耳から湯気が噴き出すくらいに真っ赤だと思う。
山南さんは、笑みを浮かべてあたしを見てる。
「一人で寝るのが怖かったら、いつでも来ていいよ」
「は、はあ………」と、辛うじて答えて、あたしはスルスルとお味噌汁をすすった。
もう中身は残ってないけど。
すると、山南さんは声を立てて笑う。
「ごめんごめん、君にとっては私と蒲団に入ることの方が恐ろしいことだったね」
そんなこと、ないけど。