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らくがき



「ちょっと」

肩をつつかれて振り返ると、総司くんがムッとして立っていた。

「なに?」
「【何】ってなんなんだよ、【おかえりなさい】とか無いの、僕には?」
「ああ、…………おかえり」
「何それ、全っ然気持ちがこもってなぁい!」
「そう?ほな、おかえりなさい。お疲れさまでした!
どう?」

総司くんは腕を組んで、フン、鼻から息を吐き出す。

「それに、あの手紙は何なの?!
たくもうっ、君ってほんとに信じ難いくらい馬鹿だよね!」

あたしを追い抜いてのしのしと自室に向かって歩いていく後ろ姿を、あたしは微笑ましく見送った。
【あのフミ】とは、山南さんに手紙を書いたついでに総司くんにも書いて送ったものの事を言っているのだ。
平助くんや一くんの面白い話などを取り留めもなく書き綴った後に、

【時節柄お風邪など召されませぬやふ、ご自愛なされませ】

と締めくくったと見せかけて、【ま、アホは風邪ひかんて言うけれど】と付け加えておいたのだ。
ついでに、鼻を垂らした総司くんの似顔絵も描いてあげた。


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