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「土方さん、今日は何の日か知ったはりますか?」
「ああ?さあな、」
興味無さそうに言って、着流しのままの土方さんはお膳の前に座った。
寒そうに両肩をすくめている。
「そうしてると肩凝りますよ?」
「ああ?」
「こうやって、カメみたいな格好してると、肩ますます凝りますよ、って」
あたしは首をすくめて、カメの真似をした。
「お前ぇにほぐしてもらうから、問題ねぇだろ」
「あたしもそんなヒマと
違いますので」
「サンナンさんの腰を揉む暇は有るのにか」
───は?
どうしてそれを知っているんだろう。
山南さんが言ったのだろうか。
「サンナンさんから聞かはったんですか?」
黙っている。
きっと山南さんから聞いた訳ではないのだ。
「まさか、覗いたりしたはりませんよね?」
あたしは目を細めた。
「覗かれちゃ困るような事があるのか」
土方さんも挑戦的な眼差しで返してくる。
けど、別にやましいことは無い。
覗かれたって問題はないが、総司くんにしろ土方さんにしろ、他人のプライバシーを平気で侵害してくることに問題がある。
「質問の答えを質問で返さんといて下さい」
「フン、俺がそんな事をする訳ねぇだろ。
そんな事をわざわざしなくとも、俺には千里眼てモンがあンだよ」
(はぁ〜〜〜〜あ??!)
千里眼だと?───あ、そうか!
(馬詰さん!!)
部屋の隅にいつも静かに座っていて、山南さんが助けを必要とする時にのみ、サッと近付いて介助できる優秀な隊士さん。
かつ、土方さんのスパイでもあったのだった。