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年末のためか、
町中は人であふれていた。
大きな荷物を持った人が行き交っている。
「みんな、忙しそうやね」
総司くんの背中に話しかけると、にゅっと手が伸びてきて、あたしの左肘をつかんだ。
「見える所に居なよ」
そう言って、自分の右側を歩かせる。
以前、平助くんに【二三歩離れてついて来るよう】言われたので、後ろを歩いていたのだけど。
それを総司くんに説明すると高笑いした。
「だからさ、平助と一緒にしないでくれる?
君一人くらい守れなくて、公方さまをお守りすることなんかできないだろ」
(へぇ、カッコええこと言うやん)
少し感心していると、総司くんは照れたようにムッと頬をふくらませた。オモロい
やっちゃ。
人で混み合う四条通りを、総司くんに腕をつかまれながら進んだ。
どの店もかきいれ時とばかりに、客を誘い込むのに一生懸命。
背中に大きな荷物を背負った行商人風の人たちも、故郷への土産物にするのか、熱心に櫛や簪に見入っている。
「そういうたら、お姉さんに送ったん?」
あたしは総司くんの顔を見上げて訊いた。
「え?」
「政変の時に、あたしに預けてたやん。
【姉上に送る櫛】って言うて。
あれ、もう送っ
たげた?」
「………は?何の事か、さっぱり分かんないんだけど」
「えー?」
あたしは目を丸くした。
「言うてたやん!お姉さんのってぇ!」
「言ってない!」
腕をつかんだまま、どんどん歩いて行くから、あたしは小走りに進まなければならなかった。