始まった日々
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人数分のお膳が揃うまで何度か部屋と台所を往復していると、お梅さんが声を掛けてきた。
「足抜け、やて?」
面白がるように、あたしを見上げてくる。
「かいらしい顔して、なかなかやるやないの」
肘で小突いて先を歩いていく。
実際に足抜けしたわけではないので、詳しく突っ込んでこられないようにあたしは「はあ、」と曖昧に返事した。
「どこの置屋にいたん?」
(ほら、そういうの困るねんけど……)
「……、それはちょっと」
すると、お梅さんはからからと笑う。
「そらそうか。下手に言うてしもて、ここに居るてバレたら困るもんなぁ」
お梅さんはくるりと振り返ると、あたしの腕をぱしんとはたいた。
「安心しよし。突き出したりせぇへんさかい」
ほんまかいな──という気持ちでその華奢な後ろ姿を見ていると、くるりと上半身だけをこちらにひねった。
舞うような優雅なその立ち居振る舞いに、【なるほど男の人は、こういうのが好きなんやな】と目を見張っていると、お梅さんは表情を引き締めた。
「そやけど案外ここの方が、郭(くるわ)なんかよりも、ずっとこわいとこかもしれまへんえ」
くすりと笑ってお梅さんはまたあたしに背中を向けた。