命の恩人
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障子を開け放してあった部屋は、案の定冷えきっていた。
早速、台所からもらってきた火を火鉢に入れた。
「はあっ」と、手の平に息を吐きかけて、火の上でこすり合わせると、早くあったまる。
【ハエみてぇに手をこすり合わせるな馬鹿】
耳の中に土方さんの声がよみがえって、あたしはわざとらしくゴシゴシと手をこすり合わせた。
「そや、お布団ひいとこ!」
お疲れだろうから、お昼寝したいかもしれない。
ちょうど布団を敷き終えたとき、足音が近付いてきた。
山南さんではない。
軽くて静かな足音は、リクちゃんかスエちゃんだ。
障子を開けて顔を出すと、桶を抱いたスエちゃんがにっこりと笑った。
「他になんぞ要るもんおまへんやろか」
「うん、今のとこは大丈夫かな」
スエちゃんは、満面の笑みでコクリとうなずいた。
「なんでも遠慮のう言うとくれやす」
「うん、ありがと」
スエちゃんを見送ろうと縁側まで出ると、馬詰さんに肩を借りて足を引きずっている山南さんがいた。
スエちゃんは、慌てて邪魔にならない所まで下がり縁側に額をつける。
「おスエさん、そんなに畏まらないでくれたまえ。
なんだか恥ずかしいよ」
山南さんに言われてスエちゃんは顔を上げたが、今にも涙の溢れ出しそうな目は真っ赤だ。
山南さんが部屋に入ると、外からスエちゃんが障子をピタリと閉めた。
たまらず駆け出したんだろう。
パタパタと軽い足音が遠ざかって行った。