<3>
しばらく休憩した後、山南さんが立ち上がろうとしたので、それまで少し離れた場所に控えていた馬詰さんが、さっとやって来て山南さんを介助した。
「すっかり年寄りになった気分だ」
苦笑いで言いながら、山南さんは馬詰さんに身体を預ける。
「冷えてきたね、そろそろ戻ろう」
まだ子ども達と遊んでいる総司くんを置き去りにして、あたしたち三人は八木さんちに向かうことにした。
お堂に座っていた時は寒いくらいだったのに、玄関に着く頃には、山南さんの首筋は汗が流れていた。
式台に倒れ込むように座った山南さんのもとに、少年が桶を持って飛んできた。
「おかえりやす」
戻った隊士の足を洗うのも女中や下男の仕事だ。
誰もがそうしてもらって当然だと思っているようで、もちろん礼など言わない。
だが、山南さんは「ありがとう」と丁寧に言った。
山南さんが足をキレイにしてもらっている間に、あたしは台所まで走ってお湯を沸かすようにお願いした。
すごく汗をかいていたから、身体を拭いた方がいいだろう。