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みんなの部屋の掃除を終えたあたしは(と言っても、やっぱり山南さん以外の部屋はかなり雑になってしまったけど)、髪をくくり直して山南さんの元へ急いだ。
幸い土方さんは留守なので、変な
いちゃもんをつけられる心配もない。
ところが、山南さんの部屋の前に見知らぬおじさんが一人、そっと控えるように座っていた。
「あの、………サンナンさんにご用ですか?」
声を掛けると、おじさんは「いえ」と頭を下げた。
(?)
(ほな、なに?)
チラリと彼を盗み見たが、相変わらずあたしに向かって頭を下げている。
八木さんちの新しい下男だろうか?
いや、袴を着けているので隊士の一人なんだろう。
(そうか!)
残念ながら、あたしは24時間山南さんにつきっきりというわけにはいかない。
もしかしたら、土方さんに【世話役】を押し付けられたのかもしれない。
源さんくらいのおじさんだけど、目鼻立ちが凛々しく、若い頃は男前だった名残がある。
ただ、どこか侍の格好がサマにならない人だなと思った。
(ま、ええか)
あたしはあたしなりに出来ることをさせて頂こう。
「サンナンさ〜ん、お待たせしました!」
部屋をのぞくと、山南さんはこっくりこっくり居眠りしている。
きっと読書に退屈してきたんだろう。
(どうしよ、)
布団に寝かせた方がいいだろうか?
とは言っても、たとえあのおじさんの手を借りたとしても、山南さんを抱えて布団まで連れて行くことは不可能な気がする。
「サンナンさぁん?」