地獄の山南敬助
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その先には彼女の毎日が記されていた。
何時山南が帰って来てもいいように掃除を欠かさないこと。
天気の良い日には、蒲団を陽に当てて、山南が温かく眠れるようにしてあること。
目に浮かぶようだ。
彼女が、山南の部屋にいる姿が。
あの夜、贈った匂い袋は、まだ持っていてくれているだろうか。
抱いておけば良かった─── 一度だけでも。
自分のものにしておけば良かった。
(こんな惨めな身体になってしまう前に………)
───さんなん先生
明里の甘えたような声が聞こえた気がした。
(罰があたったかな)
明里を裏切った罰が当たったのかもしれない。
苦笑いが浮かんだ。
最後に、【土方さんを助けて下さってありがとうございました】とあった。
(………【ありがとう】?)
何故、彼女が礼を言うのか。
何故【わたしに出来ることがあったら何でも】と、彼女が申し出るのか。
(そうか、)
山南は、クスクスと笑った。
そうだ、結局は彼女も土方を好いているのだ。
ひょっとしたら、案外、【怪我をしたのが山南で良かった】とでも思っているのかもしれない。
(そうさ、身代わりになってやったんだ)
大事な左腕と脚を奴にくれてやった。
だったら、代わりのものを差し出させればいいじゃないか。
(奴の、命にかえても守りたいものを差し出させればいい)
山南は笑い声をもらした。
「何か良いことでも書いてありましたか?」
沖田が不思議そうな顔で振り返っている。
膝の上に落ちていた銀杏の葉を指で摘んで、山南はくるくると回して見せた。
「ほら、のぞみ君が同封してくれたようだ。すっかり秋なんだね」
「へーえ、あの子にしては、粋なことするじゃない」
「紅葉には間に合わないだろうけど、雪が降る前には帰りたいな」
沖田は笑みを浮かべて頷いた。
「よし、そろそろ床上げをするかな。
沖田くん、着替えを手伝ってくれないか」
冬はそこまで迫っていた。
地獄の山南敬助/終