地獄の山南敬助
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「待ってくださいよ。今、羽織を着せて差し上げますから」
沖田は、山南の肩にそっと羽織を掛けた。
左腕を吊っているので、袖に腕は通せない。
「はい、サンナンさん宛」
差し出された手紙を沖田が座っている方とは逆の右手で受け取った。
宛名は、【山南先生】となっている。
小さく溜息をついて、山南は開封した。
簡単な作業も、片手しか使えないと随分難しいと知った。
「お手伝いしましょうか?」
「いや、いい。このくらいは、自分で何とかするよ。
慌てて読まなければならない用でもないだろうしね」
膝の上に置いた手紙を片手でカサカサと開いた。
中から出てきた折りたたまれた紙に、書かれた文字が透けて見える。
(おや?)
これは、───これは、【彼女】の字だ。
【山南先生】の筆跡を見て、てっきり土方からの手紙だと思ったのに、どうやら中身はのぞみからのものらしい。
彼女の事だから、ちょっとした悪戯心から表書きと中身の筆跡をわざと変えたのかもしれない。
匂い袋を贈った夜が、彼女との最後になった。
翌日の朝早い出立に、彼女はまだ眠っていたからだ。
詳しい容体が知らされていないのか、それとも山南のことなど何も思っていないのか、彼女から便りが届いたことは一度も無かった。
早く読みたいと逸る気持ちが、余計に作業を難しくする。
山南は焦れて、手紙を振りさばいて広げた。
その紙の音に、背中を向けていた沖田がちらりとこちらを見たが、
他人の手紙を覗き見るのは無礼だと思ったのだろう。
また、山南に背中を向けた。
【サンナンさんへ】
彼女は、そう書き出していた。