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木々の葉が色付き出したのはいつ頃だっただろう。
縁側に舞い落ちている葉を箒で庭に掃き出しながら、あたしは知らずため息をついた。
総司くんと山南さんのいないここは、どこかガランとしていて、冷え冷えとしている。
いつだったか、山南さんが四つん這いで走って行った縁側を眺めて、またため息をついた。
袂に手を入れて小さな匂い袋を取り出す。
鼻に近づけると、ブーケのようなよい香りがした。
(サンナンさん、どうしたはんにゃろ………)
あれから随分と経つけれど、山南さんがいつ帰ってくるとも知らされていない。
容態も分からないままだ。
もちろん、総司くんからの手紙で土方さんは知っているのだろうけど、その内容をあたしに伝えるつもりはないらしい。
山南さんの容態なんか、あたしには無関係だと思っているのかもしれない。
(一回きいてみようかな………)
それを聞いたところで、あたしに何か出来るわけでもないけれど。
それとも、手紙でも書いてみようか───。
「やあ、
のぞみ君。こんなところで何をやっているのかね」
この柔らかい声は近藤さんだ。
ゴリラみたいな顔に似合わず、近藤さんは優しい良い声をしている。
「あー、近藤さん」
そうだ、近藤さんに訊いてみようか。
「サンナン君の部屋になど入り浸っていないで、トシについててやらなくちゃあ駄目じゃないか」
「土方さんにですか?」
「そうだとも、トシは平気そうな顔をしているが、サンナン君のこと大層気に病んで───」
「そうそう!」
あたしは大事なことを思い出した。
ここのところ、土方さんの連日連夜の勤務が気になっていたのだ。
山南さんと総司くんが抜けて人手が足りないのは分かるけれど、このままでは身体を壊してしまう。