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「土方!」
山南の悲鳴に似た声が響いた。
同時に土方の着物を掴んだ山南の手が強い力で引き付けた。
土方の身体が反転する。
二人の位置が入れ替わった───それは、一瞬の出来事だった。
「サンナンさん!!」
刀を腹に溜めた浪人が山南に体当たりを浴びせたのだ。
「サンナンさん!!」
山南は自分を盾に、全身で土方をかばっていた。
浪士の刀は山南の左腕と脇を斬り裂いた。
手の中で山南の身体が重くなっていく。
「おい、サンナンさん!」
他に敵は───ぐるりと見渡したとき、山崎が駆け込んで来たのが目に入った。
後には斎藤や、数人の隊士が続いている。
山南を傷つけた浪士は、恨みを込めた剣で滅多切りにされて絶命した。
「サンナンさん!」
斎藤が駆け寄り、茫然と動けない土方の手から山南の動かなくなった身体を引きはがす。
山崎が医者を呼びにやる。
土方の頭は派手に痛み始めていた。
山南の【土方】と呼ぶ声が耳にこびりついて離れない。
戸板に横たわる山南は、本当は自分の姿であったはずだった。
激しくなる頭痛に比例して、思考力は鈍くなっていく。
だが、土方は副長としてこの場を処理しなければならない。
大坂奉行に事件を届け、近藤に知らせ、会津にも報告をした。
現場を片付け、店の主人の挨拶を受け、その身が自由になったのは夕刻だった。
陣営に戻っても、そこに山南の姿はなかった。
町医者に担ぎ込まれたまま、身体を動かせる状態ではないからだ。
「今のところ、命に別状はない」
そう近藤が告げた。
【今のところ】と付け加えたのは、このまま傷が膿まずに塞がれば、という条件がつくからだが、土方はとりあえず落ち着きを取り戻した。
昼から続いていた頭痛が心なしか和らいだ。
「【心配かけるといけないから、ほかの隊士には黙っておいてくれ】と目を覚まして真っ先に言ったよ。
どんなときでも、サンナンは、サンナンだ」
近藤は山南を親しみを込めて愛称で呼びながら、「喋れるくらいだから、大丈夫だ」と土方をさらに安心させた。
「気心も知れてる、総司に看病をさせよう」