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仮陣営となっている常宿の部屋へ土方が戻ると、うつ伏せに寝転がった沖田が手紙を広げていた。
土方に気付いて「あ、」と顔を上げると、ぬっと手紙を突き出す。
「平助から」
見ると、大胆な筆跡で平穏な日々が報告されていた。
「京は静かなようだね」
沖田が土方を見上げる。
土方は小さく笑って、沖田に手紙を返した。
「サンナンさんも読みます?」
沖田に言われて、山南は手を伸ばした。
北辰一刀流で同門だった藤堂は、その見た目に不似合いな大振りな字を書く。
沖田が言ったように、日々の状況を伝えていた。
「うん?」
途中から突然筆跡が変わった。
山南は戸惑いながら、土方を見る。
「どうしたの、サンナンさん」
山南の戸惑いに気付いた沖田が面白がるように聞いてきた。
「これは、…………誰が書いたんだろうか」
山南はキツネにつままれたような表情だ。
「土方さんの筆跡にしか見えないでしょ?」
「あ、ああ、うん、そうだな。しかし、…………」
これは、明らかに先ほど京から届いたものなのだ。
ふふん、と沖田が笑う。
「
のぞみ君ですよ」
「
のぞみ君の?」
「そう、そっくりでしょ?」