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お寺のズラリと並ぶ寺町通りを歩いた。
平成の世では、寺町通りといえば中心街にある商店街の一つだが、そういえば、その商店街に不釣り合いなほどお寺みたいなのが多かった。
(なるほど、この頃からお寺ストリートやったわけやね)
などとキョロキョロしながら今出川通までやってくると、平助くんは一軒の仏具屋さんの裏に回って木戸を押した。
そこは裏庭になっていて、正面に母屋と思われる座敷から続く縁側。
キョロキョロする平助くんにつられて庭を見渡していると声がかかった。
「藤堂さん、
のぞみ君!」
振り向いた先に島田さんの巨体があった。
「あ、島田さん!」
「随分歩かれたでしょう」
島田さんはあたし達に労いの言葉を掛けて、ニッコリと笑った。
「土方さんから手紙を預かってきたんだ」
島田さんは平助くんから手紙を受け取ると、「どうぞこちらへ」と離れの一室を示した。
縁側から中へと招き入れられ、あたしと平助くんは並んで上座に座った。
あたしたちと対面に座った島田さんは、うやうやしく手紙を掲げ持ってから、太い指でそっと紙を開いた。
土方さんからの指示が書かれているのだろうか。
島田さんは神妙な顔付きで読み終えると、また丁寧に折り畳んで懐の中にしまった。
「んじゃ、確かに渡したから」
平助くんが腰を上げようとしたとき、可愛らしい声がかかった。
「ごめんやして……」
縁側に控えるようにそっと、少女が三つ指をついて綺麗に結った頭を下げていた。
「おさと殿」
島田さんの声に、思わず島田さんを見ると、彼は慌てたように【おさと殿】を紹介した。