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小上がりの席に通されると、早速平助くんが包みをテーブルの上に広げる。
「何だそりゃ?」
新八さんが不思議そうな顔で見詰めた。
「土方さんへの貢ぎ物だよ。
さっきのお嬢さんが
のぞみに託けたんだ」
「へーえ、モテるねぇ」
新八さんは、どうでもいいような返事だ。
こそ、と軽い音を立ててフタが開いた。
中には、なるほどツヤツヤした黒い漆塗りの本体に貝がらで作ったような花の絵が入った印籠が収まっていた。
「へぇー、螺鈿か」
新八さんが興味無さそうに言う。
「土方さんが欲しがりそうだよね。洒落てるもん」
もはや、薬入れというよりは単なるアクセサリー。芸術品だ。
「いい品だね、土方くんも喜ぶんじゃないかな」
山南さんが穏やかな口調で言った。
「それはそうと、結婚したら、やっぱり休憩所に住まはるんですよね」
「うーん、休憩所というか、まあ住居は構えることになるだろうね」
「えっ、結婚ってなんだ?」
新八さんはそっちに食いついてきた。
「さっきの呉服屋のお嬢さんが土方くんにご執心でね。
正式に縁談を持ち掛けられている」
「へえーーーーーーっ」