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晴着の他に襦袢と帯も買ってもらって、申し訳ないとは思いながら、あたしはにこにこ顔で店を出た。
「そうだ、甘いものでも食べて帰ろうぜ!」
「平ちゃん、大好き!」
腕を絡めると、「こらこら、」と山南さんが間に割り込んできた。
お香の匂いだろうか、清々しい香りが鼻孔をくすぐる。
「男の恰好をしているからといって、そうくっつくものではないよ。
平助は幼く見えるけど、れっきとした大人の男なんだからね」
「ちょっとぉ、どういう意味だよ、サンナンさぁん!」
平助くんは頬を膨らませた。
その時だ、カラコロと下駄の音がこちらに近付いてきた。
見ると、呉服屋のお嬢さんだ。
「す、すんまへん…………」
何か忘れ物でもしただろうか。
息を切らしてやってきて、彼女はもう一度「すんまへん」と頭を深々と下げた。
「おや、どうしました。我々が何か忘れ物でもしましたか?」
山南さんもそう思ったらしい。
「いえ、…………」
彼女はそう答えるなり、あたしの手を引っ張った。
ぐいぐいと手を引いて、路地へと引き込もうとする。
「おいっ、」
背後で平助くんの声があがった。