no choice
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楠くんの腕にさらに力が込められる。
「そいつを放せ」
一歩、土方さんが前に足を踏み出した。
あたしたちは、門前の綾小路通を挟んで立っている。
ほんの数歩で渡ることのできる狭い道だ。
「土方さん、なんでもないんです!ちょっと、霧を見てただけなんで」
精一杯、【何でもない風】を装ってみる。
「馬鹿なことを考えるな、まずそいつを放せ」
「アホなことなんかしてませんて、あたしがこけそうになったんで、助けてもらっただけで───」
「お前ぇは黙ってろ!」
雷みたいに声が轟いて、あたしはびくっと身体を震わせた。
その途端、首筋にチリッとした痛みが走った。
「じっとしててください。動くと痛い思いします」
そこでようやく気が付いた。
楠くんの右手に小刀が握られていることを。
その切先があたしの喉元に突き付けられていることを。
「楠くん、人質なんかとったら逃げられんようになるって。
あたしなんか放っといて、早う逃げ!」
「そいつの言う通りだ」
土方さんが静かに言った。
「そいつなんか放り出して、逃げるがいい。
この霧だ。すぐには追いつけねぇ。上手くやれば、逃げおおせることができる」
土方さんは、じりじりとこちらへ近付いてくる。
楠くんは、あたしを腕の中に閉じ込めたまま、微動だにしない。
「土方さんの言う通りや。霧に紛れて逃げって!」
「言うたでしょ?私は、もうどこにも帰れないんです、こうなってしまった以上」
土方さんの右手が柄にかかった。
「あたしなんか、人質の価値ないんやから。
あたしもとろも串刺しにされんで」
背後の楠くんに語り掛ける。
楠くんはくすりと笑った。
「そうどすな、ほな、確かめてみよやおへんか。
その方がのぞみはんもすっきりしはるやろ?」
no choice<1>/終