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「のぞみはん?」
「しっ、静かに!」
真っ白で、足元が辛うじて見えるだけの壬生菜畑に足を入れる。
「逃げ」
「え?」
「この霧や、すぐには見つからへん。松輔さんとこ行き」
だが、どうしたことか楠くんは逆にあたしの手を引いて立ち止まった。
「今逃げたら、それこそ間者やて言うてるようなもんやおへんか」
「そやから、松輔さんとこにもう一回雇てもらい。
もう、こんなとこ戻ってきたらあかん!」
間者と疑われている以上、今日でないにしろ、楠くんはいつかきっと捕まるだろう。
間者は処刑されたあと、刀の試し斬りに使われるという。
その前に、酷い拷問にもあうかもしれない───
畑へ引き込もうとするあたしを、楠くんはがっちりと引き留めている。
その背後に最悪な人影が表れた。
(土方さん………!)
あたしの表情で分かったのか、楠くんは悲しそうに微笑んだ。
「のぞみはん、私は戻れないんです」
「───へ?」
ぐい、と手を引かれてつんのめるように楠くんの方へ倒れ込んだ。
その華奢な身体つきからは信じられくらい強い力で、楠くんはあたしの身体を腕の中に閉じ込めた。
ゆっくりと身体を反転させる。
土方さんのいる表門まではほんの数歩。
真っ白な霧に沈んだ畑に比べ、屋敷はいくらか霧が薄い。
土方さんの表情がゆっくりと強張っていくのがわかった。
「逃げって、絶対に殺されるって」
だが、楠くんの声はますます落ち着いたものになっていた。
「私は、戻れないんです。もうどこにも」
「楠!」
土方さんの声が響いた。