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パチリ、パチリ、パチリ、パチリ───何度目かの音に合わせて林がひざ元で刀の鯉口を切った。
斎藤と林は日ごろから下緒を柄に巻くようなことはしない。
常に抜けるようにしてある。
そのかわり、鈨(はばき)は厚くしてあった。
身を屈めた拍子に、刀身が鞘から滑り落ちないようにするためだ。
だから、鯉口を切るときにはどうしても音が出てしまう。
あと一手で詰みだ。
ぱちり───斎藤は盤面の【玉】の鼻づらに駒を打った。
とたんに林は刀を抜き放って荒木田の背中を目指す。
斎藤は御倉に向かった。
庭を抜け、表門が見えたとき、背後で歓声のような声が上がった。
不思議に思って後ろを振り返ったが、楠くんに手を引かれてまた前を向く。
「のぞみはん、ほら、霧が出てますよ!」
楠くんの弾む声に門の外をみると、真っ白になっている。
背後は騒がしいが、濃い霧が面白くて、あたしたちは表門へと急いだ。
「なにこれぇ~~、すごぉ~~い!」
「ね、面白ろおすなぁ!」
あたしたちは二人並んで、しばらくぼうっと霧に包まれた壬生菜畑を見ていた。
すると、背後にバタバタと足音が駆け込んできた。
「楠、間者だ!出合え!!」
それだけ言うと、抜き身を握った若い隊士はまたどこかへ駆けて行った。
あたしは咄嗟に楠くんの手を掴むと、門を駆け出した。