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楠くんと並んで前川邸の裏門から入ろうとすると、今一番見つかりたくない人が前からやって来るのが見えた。土方さんと近藤さんだ。
近藤さんはともかく、土方さんに見つかるのはマズい。
あたしは、楠くんの手を引いて、左へ方向転換した。
「───え、どうしました?」
「土方さん、」
「………はい、」
「あかん、て言われてんねん。こっち来たら」
「そうなんですか?」
前川邸立ち入ることはもちろん、今は楠くんと一緒にいることも禁じられている。
でも要は、土方さんに見つからなければいいのだ。
裏門が駄目なら、表門から入って行けばいい。それこそ、堂々と。
もやの出始めた壬生菜畑を横目にあたしは正々堂々表門をくぐった。
前川さんのお宅は、八木さんとこよりもずっと広い。
楠くんの手引きで、髪結いの行われている縁側に着いた。
丁度、新八さんと総司くんが縁側に腰かけて髪を結ってもらっている。
あたしに気付いて、新八さんが笑みを浮かべた。
「いよう、のぞみちゃん。俺の男っぷりを見に来たのかい?」
「新八さんの、ていうより、職人技を見学にきたんです」
「職人技ァ?」
「うん、髪ってどうやって結わはるんかなぁって」
髪結いの男性は、あたしたちの会話が聞こえていないかのように黙々と新八さんの髪を梳いている。
「こんなところにいるところを土方さんに見つかったら、また叱られるよ?」
総司くんが言ってきた。
でも大丈夫。土方さんなら、さっき八木さんちに帰って行った。
「見つからへんかったらええんやろ?その辺はちゃあんと心得てるし!」
そんなことより───【風車の弥七】みたいな妙な髪型の総司くんに言った。
「その頭、もうちょっとこざっぱりしてもうたら(もらったら)?
なんなん、そのビジュアル系みたいな前髪」
「───はぁあ?」
「そのスダレみたいな前髪、ちゃんとしてもらい。みっともないで」
隣で新八さんがカラカラと笑った。
「総司くんも、サカヤキ剃ってもらったら?」
「ええーーっ、やだって!」
子供みたいな言葉遣いで返してくる。
「だって、その方が【沖田総司らしい】で」
「君の言う【オキタソウジ】が誰か知らないけど、僕はこれでいいんだって!」
(……そうだ!)
あたしの中にあった【沖田総司】のイメージはサカヤキのある男だ。
つまり労咳を病んで死んでしまう【沖田総司】は、目の前の【沖田総司】とは別人である可能性もある。