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朝のお膳を片付けて、台所でスエちゃん、リクちゃんとお喋りしていた。
あたし達のおしゃべりは、時代は違えど似たようなものだ。
誰が男前だの、誰が優しいだの、いつも身近な男性の話題で盛り上がる。
なぜか、左之さんや平助くんのような幹部隊士より、前川邸の大部屋に住んでいる若い平隊士に人気があった。
スエちゃんは、美男五人衆と呼ばれるような雛人形みたいな容姿の男性が好みで、リクちゃんは男っぽい隊士がタイプらしい。
特に芹沢グループの中で一人生き残った野口さんに同情を寄せていて、何かと面倒をみているようである。
3人でワイワイしゃべっていると、急にスエちゃんが「ひゃっ、」と小さな悲鳴をあげた。
振り返ってみて、あたしはホッと安堵の息をもらす。
「楠くん!」
昨日、新八さんと出かけていった彼が心配で心配で、遅くまでゴソゴソ寝返りを繰り返していたら、
【うるさいな~、もう!】
───と、総司くんが襖を蹴ってきた。
ほんま、いちいち細かいことを言うてくるやっちゃ。
「おはよう」
「おはようさんどす」
楠くんは可愛らしい笑みを浮かべた。
「スエちゃん、お茶淹れたげたら?」
あたしがスエちゃんに言うと、楠くんは恥ずかしそうに微笑んだ。
「おおきに」
少し息を弾ませている。
「今日はどうしたん?非番?」
「そういう訳でもないんどすけど、髪結いを呼びにひとっ走りしてきたとこなんどす」