忍び寄る影
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「ほら、袖くらいだったら貸してあげてもいいよ」
あたしは、さっさっ、と手で払いのけた。
「いらんし」
「可愛くないなぁ。
そういうときは、【おおきに】って、にっこり笑いなさいって置屋で教わらなかったの?」
「あたしは、そういうのできないんです」
「なるほど、だから足抜けしたのか───あ!
ひょっとして、足抜けじゃなくて追い出されたんじゃないの?
だから、誰も君を追ってこないんだろ?」
しつこく袖を肩にかけてきて、総司くんは勝手にしゃべっている。
「そうか、そうか、そうだろうなぁ」
勝手にしゃべって、勝手にけたけたと笑っている。
「自分こそ、【女遊びはせぇへん】て言うてるけど、ほんまはモテへんから行きたないんとちゃうん」
「───え?」
「それか、下手くそやから恥ずかしいとか」
フンと鼻で笑うのが聞こえた。
「確かに、土方さんが君をひっぱたきたくなるのがよぉく分かるよ」
(───は?)
「また盗み聞きしてたん?!」
「だからさぁ、人聞きの悪い事言わないでよ。
君の声と土方さんの声が大きいから聞こえてきたんだってば。
だいたい、隣が僕の部屋だって知ってるんだから、もっと考えてしゃべりなよ」
まさか、縁側で涙を拭いていたのも知られているんだろうか。
「それにしても君って気丈だよね。
土方さんにあそこまでされたら泣き出すのが普通だよ」
「なんでそんなことくらいで泣くねん。
泣いたら負けやん!」
総司くんはけたけたと笑う。
「でもさ、楠はいずれ捕まることになると思うよ。
その時は、僕の胸で思い切り泣けばいいから」
「───は?泣かへんし。
第一、楠くん、なんにも悪い事してへんし」
そう言ったものの、また不安がこみ上げた。
───楠くんは今夜を生き延びるだろうか
忍び寄る影/終