忍び寄る影
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楠くんとの会話を盗み聞きしていた【輩】がいた。
それが一くんで、その報告に来たのだとしたら、あたしがそこにいては大変都合が悪い。
あたしは自分の部屋に入ると、総司くんの部屋につながる襖をそっと開けた。
総司くんが左之さんの部屋にいたことは、もちろん目視ずみである。
足音を忍ばせて目の前の襖に耳を寄せる。
その向こう側は土方さんの部屋だ。
襖の向こう側からくぐもった声が聞こえてきた。
「楠が、のぞみに懐いています───というより、のぞみが楠を可愛がっています」
斎藤に言われて、土方は渋い顔をした。
「どの程度だ」
「部屋に招き入れ、大福を食わせてやる程です」
「それは、………どういう程度だ」
「本当なら残った二つの大福を二つとも食べてしまいたいものを、一つ分け与えてやれる程です」
「大ぇした仲じゃあねぇな」
「そうでしょうか、俺には絶対に分けてはくれませんが───」
土方はじろっと斎藤を睨んだ。
楠が長州の間者ではないかという情報がもたらされていた。
ここのところ、一緒にいるところをしばしば目撃されているのぞみを問い詰めるのが手っ取り早いのは知れたことだが、誰もそれを言い出しはしない。
代わりに、斎藤が様子を伺っていた。
「【また今度、松輔さんとこに遊びに行かないか】というようなことを。
商売のこともあるので、今世間の情勢を知りたいとかで」
土方は腕を組んで低く唸った。