忍び寄る影
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あたしは、少し呆れて楠くんを見た。
「なんか滅茶苦茶な理屈やなぁ。
外国と貿易してるから襲撃していいとか、間違うてるわ」
「そうどすやろか………」
楠くんは形の良い眉を寄せた。
「そうや。それに、楠くんは今はここにいるんやから。
あんまり長州に味方するような言い方するんは良うないと思うよ?」
「───へ、や、そんなつもりやおへん!」
新選組の一員である限り、長州の味方であるような態度はやめるべきだ。
そうじゃないと、首が飛ぶことになる。
「京の人らは、そう思たはるお人が多い、いうだけです」
「それやったらええけど、万が一にも誰かが誤解して【楠くんがそう言うてる】て噂が立ったら大変や。
そういうことは、ここでは言うたらあかん、な?」
楠くんは、眉尻を下げて首を竦めた。
その顔があまりにも可愛くて、あたしは両手で楠くんの頬を包んだ。
「早よ、好きなことを言える時代が来てほしいなぁ………」
楠くんはあたしの手の中で目だけをこちらに向ける。
「好きなことを言える時代………どすか?」
「うん、色んな考えの人がいていい世の中。
幕府とか長州とか、斬り合いとかのない世の中」
楠くんは戸惑ったように瞳を揺らした。
「幕府の無い………」
あたしは曖昧に微笑んだ。
その時、───ミシ、縁側の床板が軋んだ。
あたしたちは、お互いに肩をびくっと揺らして目を合わせた。