忍び寄る影
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「硯は、日本のもんやから、エゲレス語に直せへん」
「エゲレスに硯はおまへんか………。
エゲレスのお人らは、どうやって筆に墨をつけたはるんどっしゃろなぁ………」
不思議そうな顔が可愛くて、あたしは小さく噴き出した。
「字ぃ書くときは筆は使わへんねん。ペンっていうて、もっとこうかた~い………」
そんなこと教えて何になるのか───そう思って、あたしは頭を横に振った。
「紙やったら分かるで」
「よかった、紙はエゲレスにもおますか!」
あたしはくすくす笑いながら答えた。
「うん、紙はペーパー」
「ぺぇぱぁ?なんや、面白い名前どすなぁ」
楠くんもくすくす笑う。
さっきまであんなに怒っていたのに、美少年の癒し効果はやはり絶大らしい。
「今は蘭語が流行りなん?」
「流行り、というか、異国の言葉いうたら蘭語どす」
「ふうん、そやけど将来のこと考えたら、これからはエゲレス語を勉強しといた方がええかも」
「そうなんどすか?そやけど、エゲレスいうたら夷国やないですか」
「そやから、そういう古い考えは捨てて。若いんやから、もっと頭柔らこうして考えな。
イギリス、アメリカとは仲良うしたほうが絶対ええって」
「そうどすやろか?」
「そうやって。それに、言葉が分からへんかったら、話し合いも出来ひんやん」
「まあ、そうどすけど………」
「やろ?ちょっとずつでええから覚えたら?教えたげるし」
「のぞみはんがどすか?!」
楠くんの驚き方に、あたしの方が驚いた。
「───う、うん………」
「ほな、これからはのぞみ先生て呼ばなあきませんね」
あたしは苦笑いで大福の包みを手元に引き寄せた。