忍び寄る影
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「英語で書いといてん。ほんなら、分からへんやろ誰にも」
今度こそ細い筆に墨を含ませて、手紙を書き出す。
「えいご、どすか?」
「うん、エゲレスとかアメリカで使(つこ)たはる言葉。知ってる?」
「いえ、」
楠くんは、あたしの隣でぶんぶんと首を横に振った。
「蘭語を読めはる人は、たまにいはりますけど、エゲレスの言葉を知ったはるお人は知りません」
「そうなんや、………」
「そんなん、どこで勉強しはったんどすか?」
「学校かな、………」
「学校? 寺子屋どすか?」
「………、うん」
あたしは筆を動かしながら相槌を打つ。
「へぇ、エゲレスの言葉を教える寺子屋どすか!わても行ってみとおすなぁ!」
文章の切れ目で顔を上げて、あたしは筆を硯にこすりつけた。
「───へ、ごめん、聞いてへんかった。どこに行ってみたいって?」
「そやから、エゲレスの言葉を教えてもらえる寺子屋どす」
やば、そんな話になっていたのか。
「もっとエゲレスの言葉、教えてください!」
楠くんは楽しそうに頬を赤らめてきょろきょろしている。
「筆は何て言うんです?」
「筆ぇ?ブラシかなぁ?」
「ぶらし、どすか!ほな、硯は?」
「硯ぃ?」
硯なんて、分からない。