忍び寄る影
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「え、そうなんですか?!」
楠くんが目を白黒させるので、スエちゃんはますます面白がるように言った。
「公用の手紙から前川邸の貼り紙、はたまた恋文の代筆までなんでもござれ、なんどすよ!」
「恋文………、どすか?」
「そうそう、いつやったか、のぞみはん堪忍袋の緒が切れはってね、」
「そうそう!何や、変な恋文を相手はんらに送らはって!」
リクちゃんとスエちゃんは顔を見合わせて笑っている。
「そんなことして、叱られへんかったんどすか?」
半ば呆れ顔で楠くんはあたしに訊いた。
「それが、遊女の人らにえらい評判が良うて!」
「そうそう、それを聞かされはったのぞみはんが、えらいおかんむりどしたんえ」
あはは、と二人はお腹を抱えた。
そう言えば、そんなこともあったっけ。
そんなことも、もう今は昔。
あたしの土方さんに対する信頼は懐紙よりも薄っぺらくなっている。
「ひょっとして、この後も恋文を?」
面白がるような目つきで楠くんがあたしの顔を覗き込んだ。
その表情に少し苛立ちを感じながらも、あたしは平静を装って答えた。
「ううん、今日は公用の手紙」
別に楠くんに腹を立てているのではない。
それは、あたしの信頼を、まるでティッシュペーパーみたいに鼻をかんで、丸めて捨てた土方さんに対する苛立ちだ。
「なんぞお手伝いしましょか、言うても墨すったりくらいしか出来ませんけど」
一人になると頭の中で悪態ばかりついているので、楠くんと一緒にいる方がいいかもしれない。
そう思って、あたしはオーケーした。