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午後になると、また楠くんがひょっこり勝手口に顔を出した。
「
のぞみはん、島田はんから預かってきました」
そう言って手に掲げ持っているのは、
「おまんじゅう?!」
「へえ、今巡察から戻ったんどすけど、入れ違いに島田さんから預かったんどす」
「そや、一緒に食べへん?スエちゃんと、リクちゃんも」
「いや、うちらも、もろうてよろしいんどすか?」
島田さんのことだ。
たくさん買ってくれているに違いない。
そう思いながら包みを開けると、思った通り。
柔らかそうな大福が10個並んでいた。
「ほな、2個ずつ食べよ?」
「ええんどすか、そんなようけもろても」
「うん、残っても硬なるだけやし。美味しいうちにみんなで食べよ?」
スエちゃんがすぐに熱いお茶を淹れてくれて、あたしたちは口の周りに白い粉をつけながら笑顔で大福を食べた。
「ほな、あたしそろそろ用事に戻るわぁ」
もっとしゃべりたいけど、土方さんに言いつけられた手紙の清書をしなければならない。
あれからずっと土方さんに対しては不信感を抱いているが、仕事をこなさなければあたしを追い出す口実を与えてしまうことになる。
「わてに出来ることでしたら、お手伝いしますけど………」
楠くんが申し出てくれたが、
「うーん、手紙書かなあかんねん。ほんま、面倒くさい」
あたしがそう言うと、スエちゃんが自慢するみたいに楠くんに言う。
「知ったはります?
のぞみはんてね、土方はんそっくりの字ぃ書かはるんどすえ」