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その夜、あたしは安堵感とともに布団に入った。
ここにいると、やはり安心だし心底落ち着ける。
なんとかここを追い出されないように、策を講じなければならない───そんなことを思いながら瞼を閉じた。
(それにしても、)
あの時感じた【ヤバイ】という危機感はなんだったんだろう?
【お前の手足が屯所に届けられるようなことにならねぇでくれよ】
左之さんの言葉が耳の中に甦って、ぞくりとした。
でも、今日は一人でふらふらしていたわけじゃない。
ちゃんと楠くんと一緒にいたんだから。
それなのに、【ヤバイ】と感じた。
楠くんのかつてのご主人が攘夷論者だったから?
天井を見上げると、昼間に交わした会話が次々と甦った。
【あんだけ長州を斬ってたら、そら恨まれもしますやろ】
新選組がしてるのは【取り締まり】だ。
長州を斬るのはあくまで【結果】であって【目的】ではない───はずだ。
【芹沢はんらを殺したんは、内部の犯行やて噂があるん知ったはりますか?】
【芹沢はんを殺さはったんは、土方はんらや】
(違う!)
土方さんは、ちょっと怖いとこがあるけど、卑怯なことをする人じゃない。
(………、やんな?)
切腹を申し付けるなり、磔(はりつけ)にするなりすればいいことだ。