ウソか誠か
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「それでは改めまして」
松輔さんがお銚子を持ち上げる。
まずはあたしの杯にお酒を注いでくれた。
楠くんは、恭しく杯をかかげてお酌してもらってから、お銚子を受け取って松輔さんの杯に注いだ。
「楠くんと松輔さんは、どういう関係なんです?」
杯に唇をつけながらあたしは訊いた。
奉公人と言っていたけれど、松輔さんはあきらかに京都の人ではないし、京都人の楠くんがわざわざ江戸まで奉公に上がっていたとも考えにくい。
「わてが奉公に上がってたときに、お世話になったんどす」
「───松輔さんて江戸の人ですか?」
「ええ、」
松輔さんは、柔らかく笑んで「ささ、どうぞ」とお酒を注いでくれる。
「こっちにもお店出したはるんです?」
「はい、お陰様で手広く商売させて頂いております」
なるほど、では京都支店に楠くんが奉公に上がってたということなのか。
そう勝手に解釈した。
「そやけど、このご時勢お商売の方も大変でしょ?
あちこちの商家が長州に滅茶苦茶されたはるって聞いてますし」
あたしが言うと、松輔さんは静かに笑みを浮かべた。
「それは、貿易でお金を儲けている商家でしょう」
「そうでした、まったく理不尽な話ですよねぇ」
あたしは杯に注いでもらったお酒で唇を湿した。
普段屯所では飲めないような、なめらかで香りの良いお酒が滑るように喉を潤していく。
「ですが、天子様が攘夷をとおっしゃっているのに、それに逆らうような商売をしているのですから仕方ないでしょう」