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午前中の仕事を終えて、台所に向かう。
昼ご飯は各々が出先などで食べることが多いので、八木さんたちや下男、女中の食事が用意されるのみだ。
台所には、これから自分たちも食事しようというスエちゃんとリクちゃんがいた。
そこへひょっこり顔を出すと、二人は手招きする。
「一緒に食べまひょ」
あたしは屯所にいることが多いので、断っておかないかぎり昼食を用意してくれている。
二人の用事が一段落つくのを待ってからになるので随分とお昼を過ぎるけれど、あたしはこうして三人で食べるのを楽しみにしている。
食べ始めると、すぐにリクちゃんが声をひそめた。
「なぁ、知ってる?」
あたしとスエちゃんは味噌汁の椀を持ったまま、お互いを見て小首をかしげた。
「大きな声では言えへんけど、」
それを合図にあたしたちは、ぐっと顔を寄せ合う。
「あの人ら殺さはったんは、長州とちゃうみたいどすえ」
あの人ら───とは?
きっとスエちゃんもあたしも「?」と頭の上に浮かべていたのだろう。
じれったそうにリクちゃんが付け加えた。
「芹沢はんらや!」
「ちょっと、おリクちゃん!」
スエちゃんは叱るように言った。
「ほな、誰なん?」
「
のぞみはん!」
疑問をそのまま口にしたあたしを再びスエちゃんはたしなめたが、リクちゃんは「待ってました」とばかりに口を開いた。
「あんな、奥さんが言うたはったんどすけど………」