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あくる朝、土方さんは疲れた顔であたしに言った。
「───今晩もまた四人で雑魚寝なんて言い出すんじゃねぇぞ………」
朝のお膳を持ってきたあたしは、あたたかいお茶を注ぎながら、
「まあ、ええやないですか」
あんな事があった後だ。
少しくらい馬鹿なことでもしないと気が紛れない。
「当分、お泊まりはせんといてくださいね」
すると、土方さんはニヤリと笑う。
「なんだ、妬いてんのかァ?」
そう言われて、先日土方さんにしな垂れかかっていた太夫さんが目に浮かんだ。
「───は?」
「そーか、そーか、そーだろうなァ。
面妖な恋文を遊女に送ったり、俺に届いた女からの手紙(ふみ)を故郷に送ったり───お前ぇも見かけによらず可愛いところがあるよなァ」
「───はぁ?」
「照れるんじゃねぇよ」
「照れてませんし」
「ほう?」
土方さんは味噌汁をすすりながら、お椀から目だけ出してニヤニヤしている。
「きもっ」
つーん、と横を向く。
土方さんは、「ふふん」と笑ってご飯をかき込んだ。
最初はすごく不愛想で怖い人だと思ったけど、案外子供っぽくて面白い一面がある。
「気持ち悪ぃのはお前ぇの方だろうが。
にやにやしやがって」
今度は土方さんが、ぷいっとそっぽを向いた。