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「なあなあ、そもそも、なんでみんな浪士組に入ったん?」
あたしは料理に箸を伸ばしながら訊いた。
三人は顔を見合わせていたが、やがて馬越くんが口を開いた。
「それは、やはり公方様をお護りするためです。
それに、天子様のおられる京の町も、長州腹から護らねばなりません」
「長州バラ?」
「長州の奴等って意味ですよ」
楠くんが冷ややかな口調で教えてくれた。
「へーえ、みんな正義感強いねんな」
あたしは感心して馬越くんの可愛らしい顔を見た。
「そやけど、こないだの政変で、長州は京都から追い出されたんやろ?
これで、しばらくは安心やな」
「そうでもありませんよ」
山野さんが溜息をついた。
「忍び込んでくる輩はいくらでもいます」
「そうなんです、だからますます警戒を強めないと」
「ふうん、」
「我々新選組の中にも、奴らの間者が紛れてるってこともありますしね」
「かんじゃ?!」
──スパイということか?
「おい、」と山野さんに小突かれて、馬越くんは「あ、」と手で口を押えた。
「ほんまなんですか?」
あたしは山野さんに訊いた。
山野さんはきょろきょろと周りを見回してから、声を低くした。
「大きな声では言えませんが、実際、何人も紛れています。
大々的に隊士の募集をかけると、素性の知れない奴がたくさん入隊しますからね。
間者が紛れてくるのも、たいていそういう時です。
でも、ご心配なく。そういうのは必ず見つかって処刑されますから」
「先日も見つかって、一人処刑されました!」
ひそひそ声で馬越くんが言う。
困ったような顔で山野さんが馬越くんを見た。