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角屋の大広間には、すでに隊士たちが集まっていて半分くらい席が埋まっている。
いわゆる上座には、すでに近藤さん、土方さん、芹沢さんが座っていた。
「俺たちは、末席でいいだろう」
「そうそう、下戸と酒飲んでも面白くねぇしな」
平助くんが土方さんのことを茶化す。
あたしたちは、座った隊士たちの間を通って、部屋の隅の方へと移動した。
「──お、小十じゃねぇか」
左之さんが誰かを見つけて声をかける。
【こじゅう】と呼ばれたのは、まだ中学生みたいな少年だった。
(なに、めっちゃ、可愛いやん……)
「この子も隊士なん?」
「ああ、楠小十郎。可愛いだろう?」
「うん、めっちゃ可愛い!」
四つん這いになって顔を近づけてみると、黒目勝ちな切れ長の目を長い漆黒の睫毛が縁取っている。
白い頬は陶器で出来ているみたいにツルツルだ。
「あたしの小姓につけて!」
「こいつは、山本
のぞみ。
土方さんのコレだから、気を付けろよ」
左之さんは小指を立てる。
「ちょっと、」
左之さんの肩をバシッと叩いた。
「ちゃうちゃう、そんなんちゃうし。よろしくね~」
「は、はい!よろしくお願いいたします!」
頬をピンクに染めて【こじゅう】は背筋をしゃんと伸ばした。
「あ、そうや!美男五人衆って知ってる、左之さん?」
左之さんは、まだ宴会が始まってもいないのに、仲居さんを捕まえて、「とりあえずお銚子五本」と頼んでいる。