<2>
次の日の夕、土方は沖田、永倉、斎藤、原田とともに祇園に向かっていた。
【山の緒】という貸座敷を目指している。
「はぁ~、こういうとこ歩いてると飲みに行きたくなるねぇ」
原田がうんざりしたように言う。
「新見先生におかれては連日のご遊興とは羨ましい限りだぜ」
永倉も軽口を叩く。
「ささっと終わらせちゃって、後で飲みに行こうよ」
沖田が振り返って後ろ向きに歩く。
土方と斎藤は、黙々と歩いた。
【山の緒】に着くや、土方はさっそく中へと足を踏み入れた。
「御用である」
突然現れた長身の男に、店番は震えあがった。
その背後には、さらに四人の鋭い目つきをした男たちが控えている。
飛んできた店の主人に、土方は静かに訊ねた。
「新選組局長、新見錦先生がご遊興中であるはずだが、座敷はどこか」
「へっ、は、離れでござりまする……!」
それを聞くと、即座に四人はそれぞれの持ち場へと散っていく。
原田と永倉は離れに面した庭へ、沖田と斎藤は土方の背後を護る。
「亭主、騒ぐ者、声を立てる者は斬る」
そう告げるや、土方と二人は離れへと向かった。
.