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がらんとした八木さんちは、なんだかうすら寒くもあった。
今まで、ここに皆がいたことが現実ではない感じさえする。
今、ここから外に出たら、現代に戻ってた──なんてことも起こりそうなくらい、異様な静けさだ。
(まさか、そんなことないやんな……)
──なんだか心配になって、下駄をつっかけた。
現代に戻るなら戻ったで、それはいいことなのかもしれない。
(戦になるとか、知らんかったしな……)
皆と別れるのは寂しいが、それこそ、今日皆が戻ってくる保証もないのだ。
(こんなとこに独りぼっち残されても嫌やしなぁ……)
そんなことを思いながら、八木さんちを出た。
坊城通りにアスファルトは敷かれていない。
大丈夫そうだ。
(念のため、四条通まで行ってみよ)
歩き始めると、すぐに畑が広がる。
多分、まだ江戸時代のはずだ。
「うん、間違いなさそう」
四条通は、昨日と変わらない江戸時代のものだった。
仕方なく八木さんちに戻り、手持無沙汰なので掃除をした──徹底的に。
畳まで拭いた。
それでも暇になって、あたしは腰を上げた。
「壬生寺行こ」