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みんな相撲興行に行っているためか、八木さんちはしんと静まり返っていた。
新八さんの後に続いて、あたしたちはぞろぞろと部屋に上がり込む。
新八さんは用心深く縁側から辺りを見回したのち部屋に入り、どっかと胡坐をかいた。
車座になった皆を見渡して、深呼吸を一つする。
「芹沢たちが、大和屋を焼き討ちしやがった」
「ぇえぇぇぇえぇええーーーーっっ!!?」
誰よりも先に声をあげたのは、意外にもあたしだった。
「──なんで?」
あたしが、きょろきょろとみんなの顔を見回すと、皆は困ったような表情で静かにあたしを見ていた。
新八さんの言うところによると、昨夜、生糸商の【大和屋】に芹沢グループが乗り込んだらしい。
「当家は、御所へ金一万両を献納いたし、天誅組とか申す尊攘激派の者どもに、かなりの軍資金を与えたと聞いておる。
ならば、公武合体に尽忠してしておるわれら壬生浪士組にもぜひ援助を賜りたいものだ」
そう芹沢が脅したらしいと、新八さんが物まねで教えてくれた。
「あっはは、似てる似てる!
要するにカツアゲされたわけやね、大和屋さんは芹沢さんに」
思わず笑ったあたしの脇腹を平助くんが小突く。
「まあ、芹沢が言うことにも一理はあるんだがな」
新八さんは続けた。