Missing Without A Trace
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「それにしても、ほんと土方さんが書いたみたいにそっくりそのままに書くよね」
感心したように言って、「そうだ、」と総司くんは頬杖をついていた顔をパッとあげた。
「ついでにさぁ、もっと面白いことしない?」
総司くんの悪だくみを聞いて、あたしは呆れつつも「イヒヒ、」と笑う。
「ナイスアイディア!
やろ、やろ!やってやろう!」
あたし達はケタケタ笑いながら、たまりにたまった恋文をひとまとめにした。
「文章は総司くんが考えて」
「わかった」
総司くんは、咳ばらいを一つすると、神妙な顔つきで、時候の挨拶から簡単な近況を述べる。
そして、いよいよ核心に迫ると、もう二人とも笑いが止まらない。
「──尚々、拙義共報国有志と目かけ、婦人しとひ候事、筆紙難尽、」
「ちょ、ちょう待って!」
笑いで筆が震えそうになるので、息を整える。
総司くんもひっくり返って笑っている。
「そうだ、そんな奇特なご婦人が誰なのかも紹介しておいたほうがいいよね」
総司くんはそう言うと、あたしが書いた返事の宛名をチェックした。
そして、くすくす笑いながら、
「先京ニ而ハ、嶋原花君太夫、天神一元、祇園ニ而ハ所謂けいこ三人程有之、北野ニ而ハ君菊、小楽と申候まひこ、」
「待って、待って」
あたしの筆が追いつくのを待ってから、再び総司くんは続ける。
「大坂新町ニ而ハ若鶴太夫、外弐三人も有之、北ノ新地ニ而ハ沢山ニ而筆ニ而ハ難尽、先ハ申入候」
あはははは、と声を合わせて笑う。
こうして、あたしたちはこの手紙を添えて、たまった恋文を故郷の日野に送りつけてやった。
もちろん、陳腐な句を添えることも忘れてはいない。
報国の心ころをわするゝ婦人哉
歳三如何のよミ違ひ
Missing Without A Trace/終
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