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嫌な時間が流れた。
皆、不貞腐れた顔をして黙りこくっている。
山崎の自室は前川邸にある。
職務上不在も多く、すぐにつかまるとも思えなかった。
だが思ったよりも早く重々しい足音が戻ってきた。
誰かが舌打ちをする。
【もうちょっと時間を稼げよ】と、皆が不満そうな視線を向けた。
視線の先にあるものを理解するには時間を要した。
「平助、蒲団を敷いて」
沖田の声に、皆はっとする。
平助が飛び上がるように立ち上がった。
「
のぞみ!?」
沖田が腕に
のぞみを抱えている。
意識がないのか、頭を沖田の胸に預けていた。
乱れた髪が汗でうなじに張り付いている。
「──何処にいた」
原田が立ち上がる。
「芹沢の部屋だよ」
ざわめいていた場が一瞬で静まり返った。
藤堂が声を震わせる。
「は、袴はどうしたんだ……」
「どけ、平助!」
原田が藤堂を押し退けた。
「あの野郎、ぶっ殺してやる」
原田の言葉に吊られて永倉も立ち上がる。
井上は、おろおろと皆の顔を見渡したが、もはやこうなってしまっては止められない。
【いや、止める必要があるのか】と、浮かした腰をまた床に落とした。
「何を騒いでる」
土方の声に皆振り返った。
先程まで自室に戻っていた土方が、いつの間にかそこにやってきていた。
「土方さん……
のぞみが、」
原田の視線の先を追うと、沖田に行き当たった。